融資を受けて物件を購入する際に欠かせないのが「抵当権」「根抵当権」。
聞きなれない言葉かも知れませんが、この意味を知っておかないと、マイホームを購入することも不動産投資をすることもできません。
この記事では抵当権・根抵当権の基本を簡単に解説した上で、抵当権・根抵当権に関わる基本的な手続き方法についても説明します。
「物件の購入を考えているけど、抵当権・根抵当権ってよく分からない」というあなたはぜひ目を通しておいてください。
【もくじ】
抵当権とは
抵当権とは、「不動産を担保にしたことを証明する権利」のことです。
例えば、あなたが住宅を購入する際、銀行から2,000万円のローンを引いたとします。
銀行はあなたが購入する物件を担保に2,000万円を融資し、その物件に抵当権設定登記を行うための手続きを取ります。
その後、あなたが無事2,000万円を完済できればその物件の担保権は消滅し、逆にもし借金の返済が不可能になったら、その物件を差し押さえ⇒競売することで残債の代わりとされます。
銀行は誰にでもお金を貸すわけではありません。
「この人はきちんと全額返済できそうだ」と思わせる人でなければ、融資は実行しません。
そのためには、借りる側は「私は返済できる能力がありますよ」ということを論理的=金銭的に示さなければなりません。
その一つの手段が「換金できる不動産を担保に入れられる」というものなのです。
抵当権は複数設定も可能
なお、一つの物件に対して複数の抵当権を登記することも可能です。
あなたが一つの物件を担保に、A銀行に2,000万円、B銀行に3,000万円を借りることもできるということです。
その場合は、抵当権設定登記をした債権者順に「一番抵当」「二番抵当」…という形で、優先的に弁済を受けられる権利が設定されます。
もしあなたの担保物件が差し押さえ⇒競売になり3,500万円で売れたとすると、A銀行は最優先で2,000万円の弁済を受けられ、B銀行には残りの1,500万円が弁済されます。
当然ながらB銀行は損なので、二番以下の抵当権にはあまり担保価値はありません。
なので現実には、借入額に対して大きな価値が無ければ、同じ物件を複数の債務の担保として差し出すことは難しいと言えます。
根抵当権とは
根抵当権は「設定した極度額の範囲なら、何度でもその物件を担保に融資する権利」のことを指します。
あなたの物件に3,000万円を極度額とした根抵当権を設定したら、あなたは何度でも債権者から3,000万円以内の融資を受けられるのです。
何度も資金の借入・返済をすると抵当権の設定・抹消登記が面倒なので、何回も融資を受ける事業者が利用するのが根抵当権なのです。
自分で事業を行っていない人は何度も融資を受ける必要性が薄いので、根抵当権は抵当権に比べるとあまり見かけることはないですね。
根抵当権特有の「元本確定」について
根抵当権は「何度も貸し借りできる」という権利のため、借入金を完済したからと言って権利が消滅するわけではありません。
そのため、「債務者が弁済しないので担保物件を競売にかける」「もうお金を借りないので根抵当権を抹消する」という時には、「元本確定」を行う必要があります。
元本確定とは、その時点での残債を確定し、「残債を完済することで根抵当権は消滅しますよ」という約束を行うことです。
例その1)
あなたはA銀行と極度額3,000万円の根抵当権を設定していましたが、会社を廃業するので今後借入を行う予定が無くなり、根抵当権の抹消をA銀行へ依頼しました。
依頼した時点であなたは残債1,300万円の借入をしていたので、元本確定を行うことで「今貸し借りしている1,300万円を完済したら、根抵当権は消滅する」という約束をA銀行と交わします。
完済したら物件の根抵当権の効力は無くなり、担保権が消滅し、同時に新規借入の際は新たに担保の話からスタートしなければならなくなります。
例その2)
あなたは3,000万円をA銀行に借り入れたものの、残債1,500万円が返済できず、担保物件が競売に掛けられることになってしまいました。
競売に当たっては元本確定をしなければならないので、残債1,500万円が元本として確定されます。
結局、物件は競売で2,000万円で売れ、A銀行は1,500万円を回収し、残りの500万円はあなたの手元に戻り、根抵当権の効力は消滅しました。
抵当物件を買っても大丈夫なの?
物件を探していると、抵当権・根抵当権が登記されている物件もたまに出てきます。
そこで疑問なのは「抵当物件って買っても大丈夫なの?」というところですよね。
基本的に、抵当権・根抵当権は売主に抹消登記を完了してもらってから引渡しを完了する形となります。
「抵当権抹消登記をもって売買契約成立とする」という条件付の売買契約を締結し、抹消登記完了の証明をもって取引を行います。
この形であれば、引渡しに時間がかかる可能性も出てきますが、きちんと抹消登記ができていれば特に問題は起きません。
しかし、売主が借入金を弁済できず、債権者の同意を得て競売前に物件を売却する「任意売却」となると話は別です。
任意売却の場合は生きた抵当権(or元本確定後の根抵当権)が設定されているので、物件を売却したお金を即座に借入金の返済に充て、完済して抵当権抹消登記を行ってもらう方法を取ります。
この場合、買主には売り逃げされる危険性も生じるため、双方立会のもとで即日全ての手続きを行うといった対策が必要になります。
仲介業者が段取りをしてくれますが、注意しながら進めましょう。
自分の物件に抵当設定するには
あなたが借入のために自身の物件を担保に入れる際は、金融機関との融資相談の中で話が進むので、担当者の指示に従いましょう。
物件の調査に始まり、担保に入れる場合は必要書類の準備の他、登記手数料の支払いなどがあります。
基本的には債権者が司法書士に依頼して登記作業をしてくれるので、あなた自身で抵当権設定登記をする必要はありません。
なお、借地権上の建物や再建築不可など、担保価値が低い物件の場合は担保設定を断られる可能性もあるので注意が必要です。
当然ですが、安くしか売りさばけない物件はまともな担保にもならないですからね。
抵当権・根抵当権を抹消するには
自分の物件に設定された抵当権や根抵当権を抹消するには、債権者から完済の証明書を出してもらう必要があります。
それを持って司法書士に依頼し、抹消登記を行ってもらいます。
自分で法務局に行って抹消登記の手続きを行うことも可能です。こちらのサイトに方法が丁寧にまとまっています。
なお、抵当権・根抵当権の登記は借金を完済したからといって自然に消えるわけではありません(抵当権の効力自体は消えますが)。
完済したことに満足して抹消登記を忘れてしまう人もいるようですが、物件を売却する際には必ず抹消登記を完了してからの引き渡しになるので注意しましょう。
将来的に売却の可能性があるなら、完済後すぐに手配する方が忘れなくて良いと思います。
まとめ
・抵当権は「この物件は担保に入ってます」という証明
・根抵当権は「この物件を担保に、極度額までなら何度でも貸し借り可能」という証明
・抵当物件を購入する際は抹消登記がきちんとできてから
今回記載したのは、抵当権・根抵当権の基本的な事項です。
とりあえず「抵当物件=担保に入ってるから、競売にかけられる可能性がある物件」ということを最低限抑えておけばOKです。
具体的な仕組みや法律の話に入ると結構ややこしいので、抵当物件を購入・売却しようとする際は、プロと慎重に進めていきましょうね。
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