田舎町で増え続ける空き家の物件情報をWebに掲載し、直接取引を促す施策である「空き家バンク」。
これまでは全国の各市町村単位で空き家バンク制度を実施していましたが、今年9月から、LIFULL HOME'Sの主導で全国版空き家バンクがリリースされることになりました。
全国版空き家バンクのリリースにより、今までは不可能だった、数市町村をまたがっての物件検索や、詳しい条件検索が可能になります。
これによって、「どこかで田舎暮らししたい」という人や「田舎でビジネスをしたい」という人に対する利便性が大きくアップします。
なお、けっこう規模の大きな都市でも空き家バンクを実施している自治体もあるため、地方での不動産投資を考えている方にもメリットは大きいと思います。
ただし、空き家バンクは通常の不動産取引とは仕組みがやや異なり、利用にあたってはいくつか注意が必要です。
これから空き家バンクを利用したいと考えるあなたは、この記事で事前に注意点を押さえておいてください。
【もくじ】
- 空き家バンクの基本は大家との直接交渉
- 家がボロい&瑕疵担保責任免責
- 賃貸借でも大家が修繕責任を負わない
- 行政に書類を提出しないと利用できない
- 土日の内覧や質問ができない自治体がほとんど
- 登録物件数が少ない市町村も多い
- 物件のほとんどが築古の戸建て
- 空き家バンク、田舎不動産も面白いよ
空き家バンクの基本は大家との直接交渉
多くの自治体の空き家バンクでは、大家と利用者が直接交渉を行います。
賃貸借の場合は、契約も直接行い、最後まで仲介業者が入らないケースも多いです。
田舎の家の大家は、9割がた高齢の一般人です。不動産取引のルールや慣習、法律の知識が無いどころか、お金のやり取りにすら慣れていません。
そのため、通常の不動産取引では起こりがたいトラブルも発生しかねません。
※空き家バンクで僕が実際に遭遇したトラブル事例▼
少なくとも売買契約では素人のみでの取引が難しいため、途中で仲介業者が入るケースが多いので安心できます。
しかし、賃貸借となると「敷地がはっきりしておらず、近隣トラブルになる」「家庭の事情で急に退去を迫られる」といった問題が起こってくる可能性は低くありません。
なので、利用者であるあなたの方でよく注意して物件を吟味する必要があります。
家がボロい&瑕疵担保責任免責
上述の通り空き家バンクは基本的に個人間取引のため、瑕疵担保責任は免責です。
※瑕疵担保責任免責の物件のリスクは以下の記事で解説しています▼
さらにネックになってくるのが、長年放置されていた空き家も多く、ボロ物件の割合がものすごく高いことです。
老朽化した設備や雨漏り、シロアリ被害のある物件は珍しくありません。中には屋根が抜けていたり、床が抜けていたり、一部箇所が崩落していたりする物件もあります。
一見まだ綺麗に見えても、配管や設備が故障していたり、擁壁が脆かったりという事もあるため、空き家期間が長い物件はくれぐれも注意が必要です。
必ずしっかりと内覧を行い、補修費用がいくらかかるかを考えてから取引をしましょう。
賃貸借でも大家が修繕責任を負わない
借地借家法の原則では、大家は貸家の修繕を自らの責任で行い、賃借人がきちんと住める状態にする義務があります。
特約を結べば軽微な修繕(蛍光灯の交換など)の負担義務は免れることができますが、屋根などの大きな修繕の場合は全て大家負担となります。
ですが、空き家バンクでは、双方の信頼関係のもと(?)、「補修の費用負担はどちらが行うか」という項目が物件資料上に記載されている事例がほとんどです。
つまり、大家が借地借家法の規定によらず「うちは雨漏りとかが起きても、一切修理はしないしお金も出しません」と言うことを許しているのです。
(今まで聞いたことはないのですが、大規模修繕が発生した際、費用負担を拒否する大家を訴えたらどうなるんでしょうかね…)
空き家バンクで物件を借りる際は、必ず「補修の費用負担」の項目は確認しておきましょう。
行政に書類を提出しないと利用できない
空き家バンクは基本的に市町村が管理している制度。ゆえに、一般の不動産取引では存在しない市町村への提出書類が存在します。
特に注意すべきポイントは、物件の内覧や詳細問合せを行うのに「利用申請書」の事前提出を求める自治体が多いところ。
わざわざ内覧をするのにも、紙に必要事項を記入・押印して郵送しなければならず、面倒です(大家も運営側も無駄な書類ばっかで大変なんだコレが…)。
土日の内覧や質問ができない自治体がほとんど
外部組織に委託せず、市町村が直で空き家バンクを運営している自体は、基本的に土日祝休みなので内覧や問合せを受け付けてくれません。
行政がやっているので、ここは仕方がありませんね…。平日定時後の内覧なども断られる可能性は高いです。
さらに、空き家バンクの担当職員に物件の質問をしたところで、行政の職員も大家も不動産の素人なので、回答できる内容にも限りがあります。
早い段階で仲介業者を入れてもらうか、そうでなければ自己責任で取引を進めていかなければなりません。
登録物件数が少ない市町村も多い
空き家バンクは市町村によって登録物件数に大きなばらつきがあります。
担当職員にやる気や能力が無く、住民に全然認知されていない自治体は珍しくありません。
もしある市町村の物件情報をたくさん見たいと思ったら、自分で検索して地元の不動産業者のホームページを見て回らなくてはなりません。
(田舎ではHOME'SやSUUMO等に情報を掲載しない業者が多いので…)
物件のほとんどが築古の戸建て
空き家バンクに登録される物件は、9割以上が中古の戸建物件です。
さらにほとんどは築40年以上の古い家。新耐震基準に適合している物件は滅多に出てきません。
物件種別に圧倒的な偏りがあるので、中古戸建に興味のない方には空き家バンクの価値はあまり無いでしょう。
もちろん、築古物件には耐震性の懸念もあります。以下参考記事です▼
空き家バンク、田舎不動産も面白いよ
以上の通り、空き家バンクは通常の不動産取引とは様々なポイントが異なります。
しっかりと空き家バンク独特の仕組みやリスクを頭に入れた上で、物件探しをするのをオススメします。
直接取引という仕組み上、値付けも大家の感覚値でメチャクチャに行う場合が多いので、掘り出し物もあるのが空き家バンクの面白いところです。
兵庫や京都の田舎の方なんて、めっちゃ立派な古民家が300万円以下でゴロゴロ売りに出されていて戦慄しますよ…。
田舎は住みたい人も少なく家賃も安いため、当然ながら不動産投資には向いていません。
しかし、それを逆手に取り、安い賃料で借りてお店や宿を開業する人も増えてきています。そういう投資に手を出してみるのも面白いかも知れませんよ。
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