食文化の違いってのは面白いですね。
こんにちは、すずきです。
最近、きちんとしたレストランで会食を設定する用がちらほらありまして。
そういう場合、やっぱりイタリアンやフレンチのお店をたくさん比較検討する事になるんですけども。
そこでふと思ったのが、「日本とフランスのジビエ料理の扱いの違い」です。
まぁ、本場のフランスと、歴史の浅い日本じゃ違いがあるのは当然だし、そもそも国の料理自体が全然異なるので、あえて言うのもナンセンスなんですが。
それでも、少し日本はもったいないなーという気もしないでも無かったので、そんな考えをつらつら書いていきます。
【もくじ】
ジビエとは何か?
ジビエと言うのは、「食用に狩猟した野生動物」の事です。
また、その食肉を指してジビエと言うケースも多いです。
日本では、シカやイノシシといった農作物を食い荒らす動物がよく狩りの対象になっていて、それらがジビエとして田舎を中心に流通しています。
一方、フランスでは野ウサギや野ガモ、雷鳥など、日本より豊富な動物がジビエとして狩猟され、食されています。
これらの野生動物を狩って、食用として頂くのは、実は結構難しいのです。
罠猟ならともかく、銃猟の時は、可食部が大きく損なわれる可能性もあるし、内臓が飛び散っては味が悪くなってしまうそうです。
罠猟で獲れたとしても、凶暴な大型の野生動物にきちんとトドメを刺す必要がある。
さらに、きちんと血抜きをしないと臭くて食べられないし、肉の腐敗も早い。
要は、「ただ野生動物を狩って食いまくればいい」と言うには問屋が卸さず、なかなかに苦労が伴うのがジビエと言う食材なのです。
日本では、ジビエは肉屋やスーパーでもろくに取り扱っていないので、解体・精肉できる人はかなり重宝される感じです。
この写真は、9月の古民家改修ワークショップのBBQで頂いた鹿肉です。
まさかの市役所職員が「罠で捕らえ、解体・精肉し、炭火で焼いて振る舞う」という、一連の流れを全て担って提供してくれたジビエでした。
脂が固まるのがちょっと早いけど、適度に柔らかく、臭みもクセもなくて美味しかったですよ。
日本のジビエ料理について
日本では、まだまだジビエは少数派な存在。
食べられるお店もそう多くはないし、あっても多くは田舎の生産地、もしくはフレンチのお店くらいです。
ただ、日本でも昔からジビエは食べられていたんですよ。
イノシシの肉は「ぼたん肉」と呼ばれ、高級食材として流通していますし、鹿肉も「もみじ肉」という別名を持っています。
また、江戸時代には「ももんじ屋」という、ジビエを専門に食わせる店もあったそうな。
さて、日本のジビエ料理として最も有名なのは、恐らく「ぼたん鍋」でしょう。
薄めにスライスしたイノシシの肉と、たっぷりの野菜を鍋でグツグツ煮込む。
写真のように、牡丹の花を模した盛り付けをすることから、イノシシの肉が「ぼたん肉」と呼ばれるようになったそうです。
食べてみたいんですけど、なかなか食べられる場所もないし、高いんですよねぇ…
それ以外の特徴的な料理ってのは、なかなか浮かんできません。
牛や豚を食べる料理の代用のような感じで、最近使われる事が増えてきたかな、という程度の印象です。
田舎の方に行くと、地元で狩猟された鹿の肉を食わせるお店も増えました。
数ヶ月前には、津市美杉町(旧美杉村)で鹿肉カレーを頂きました。
まぁ、そんな感じで、他の肉の代用の域を出ない食事が多い印象ですね。値段も安い。
対して、フランス料理のジビエはさすが本格的
日本のジビエ料理が「他の肉の代用」という側面が強くなってしまっている一方、やはりフランス料理は歴史がある分、ジビエ料理が豊富です。
そして、特に日本と違うと感じるのは、「高級料理でも積極的に使われる」という点。
日本でも、確かにイノシシの肉は高級食材で、ぼたん肉なんかも気軽に食べられる料理という訳ではありません。
しかし、フランス料理では、本当に一食5ケタ円するメニューのメイン料理にもジビエが使われるほど、市民権(食肉権?)が高いのです。
例えば、六本木の名店の10,000円コースで見かけた料理(一部改変)。
『鹿のローストソースシヴェ』
鹿のもも肉を赤ワインで煮込み、鹿の出汁と豚の血でリエしたクラシカルな料理。キャラメリゼした黒いちじくとともに。
あー、あー、えー、良く分かりませんが、何か高級そうでうまそうです。
鹿肉は日本でも代表的なジビエと言えど、こんなお洒落に調理する料理はありません。
写真見たらこんなんらしいです。確かに高級そうでうまそう…
他にも、高級店の気になるジビエ料理はいっぱい。
・佐賀有明海で仕留めた尾長鴨にウサギのひき肉を詰めたバロティーヌ 半熟たまご添え
・御殿場で仕留めた日本キジ肉を軽くあぶったカルパッチョ仕立てとそのアバ(心臓・砂肝・レバー)のソテーのサラダ
・昨シーズンにシェフが北海道で仕留めた蝦夷鹿の生ハムと佐賀有明海で仕留めた真鴨ササミ肉のセッシュ ミルクゴーダチーズと野菜のピクルスのアンサンブル
…と、こんな感じで、ジビエが惜しみも無く高級料理に使われているのです。
日本とフランスのジビエ料理の違いとは、つまり
はい。ここでまとめです。
日本とフランスのジビエ料理の違いとは、ズバリ…
商品名の長さです。
日本のジビエ料理は、商品名が短い!!
僕がこないだ食ったやつなんて、
「鹿肉のカレー」
ですよ。鹿肉のカレー。
短っ。牛丼かっつーの!!
他にもほら、「ぼたん鍋」とかクソ短いじゃないですか。
三重県大台町にある「道の駅奥伊勢おおだい」で扱っているジビエの商品では、鹿肉と猪肉のしぐれ煮「ジビエしぐれ煮」というのがあります。
これもクソ短いじゃないですか。
商品の名付けで、フレンチに比べて圧倒的にジビエ料理の文字数が少ないんですよ。
本格的にジビエを販売して行きたかったら、フレンチみたいに文字数を多くするべき!
例えば、「鹿カレー」だったら、こんな風に。
・御在所岳で本日捕らえた仔鹿肉と裏山朝獲れの山菜をふんだんに入れてインド・バンガロールの厳選12種類のスパイスで4時間煮込んだ三重ジビエカレー 御浜町の尾呂志米とともに
こうするだけで一気に高級感が出て、日本のジビエ業界も盛り上がるはずです。
まずは三重県が、こういう名付けのパイオニアになって、国内のジビエ業界を引っ張って行くべきだと思います。
余談
日本のジビエ料理は、もっとハイエンドにしても良いんじゃないかと思います。
特に、自治体主導でジビエを売り出す時は、焼いたものをそのまま出すとか、ジャーキーとか保存が利く製品に加工されて出されていたりします。
でも、残念ながらその商品はありきたりなものが多く、お洒落でもないし、素材の味以上のものを出せてはいない。
それじゃあ、確かに付加価値が付いてないのだから、高くは売れません。
しかし一方でジビエは食肉化するのに手間が掛かる事から、なかなか製品化しても採算が合いづらい状況があるんじゃないかと思うのです。
確かに、ジビエを本格フレンチのような高付加価値の付いた料理に変身できる腕前を持ったシェフはなかなかいません。
田舎であればなおさらです。
でも、それだったら、わざわざ自分達で頑張って加工して売り出すより、近隣都市のジビエを扱うレストランに販路を作った方が良いのでは?
尾鷲だったら、獲れた鹿をジャーキーとかに加工して売るんでなく、津とか伊勢のジビエ料理を出す店と契約して、獲れたら売る。
下処理・冷蔵した一匹まるまるを売っても良いし、精肉したものを売っても良いし。
もしかしたら、その方が手間もかからず、利益率が高いかも知れません。
それに、ジビエの加工品を買う人って、結構珍しい物好きな人ばかりだと思うのです。
想像の域は出ませんが、人数は決して多くないし、ありきたりな物を買ったとしたら、それは決して商品や地場ジビエのブランディングには繋がらない。
それよりも、近隣都市の高級レストランで「本日仕留めた○○産鹿肉のロースト」って形で出してもらう方が、よっぽど印象も良いし、記憶に残る人数も多いんじゃないかと。
「ジビエを有効活用しよう」という考えは僕、大好きなんですが、せっかくだからもっと売り方も考えようよ、って話です。
もちろん、獲れたその地で高付加価値の商品を提供出来たらベストなんですけどね。
とは言え、ありきたりな物をコストを掛けて生産して売り出す以外に、都市のレストランに売るとか、もっと効率的な方法を研究した方が良いのでは?と思います。
日本の田舎では、ジビエ自体は珍しい物ではありませんが、本格的なジビエ料理となると、まだまだ国内でも数が少ないです。
さらに、フレンチ以外の調理方法で本格的なジビエ料理を出す所は全然ない(兵庫県篠山市が、ぼたん肉を売り出しているようですが)。
案外、良いチャンスだと思うんですけどねぇ。どうでしょうかね。
じゃあの。