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高梁市に出来たツタヤ図書館の問題―「地域を活性化できない」

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高梁市が整備した複合施設(同市旭町)の核となる市図書館が4日、開館した。

県内の公共図書館では初めて民間企業が指定管理者となり、年中無休で併設のカフェや書店とともに運営に当たる。

施設はJR備中高梁駅に隣接、バスセンターや観光案内所も備え、市中心部のにぎわい創出を目指す。

 図書館は、旧高梁中央図書館(同市向町)の老朽化に伴い整備。

複合施設(鉄骨鉄筋4階延べ3882平方メートル)の2~4階で展開する。

面積は延べ2251平方メートルで旧図書館の2・8倍。

蔵書数は2万冊増の12万冊とした。

開館時間は午前9時~午後9時。市外の人も利用できる。

 指定管理者は、レンタル大手TSUTAYAの運営会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、本店大阪)。

2階のカフェ・スターバックス、蔦屋書店、観光案内所も運営する。

市は2022年3月末まで、年間約1億6千万円の指定管理料を支払う。

 CCCは13年4月以降、佐賀県武雄市、神奈川県海老名市、宮城県多賀城市の計3公共図書館を運営。

当初、資料価値の低い中古本購入や、ジャンルの違う本を一緒に並べるといったことが問題となった。

高梁市は市教委の選書点検や、月1回程度のCCCとの意見交換の場を通し運営をチェックする方針。

 複合施設は15年8月に着工し、今月1日に完成した。

総事業費は19億8700万円。2階は備中高梁駅と直結し、1階にバスセンターと飲食店など4店舗が入居する。

 この日のオープニングセレモニーで、近藤隆則市長は「本との出合いや人との交流を通じ、市民が幸せに暮らせるまちづくりに寄与する施設になれば」、

武田宣(のぶる)CCC副社長は「市民と心を一つにして日常生活がわくわくするような企画を展開したい」と述べた。

引用:http://www.sanyonews.jp/article/483680

こんにちは、すずきです。

今回はこのニュースについて。

 

きのう、岡山県高梁市という田舎町に、全国4番目となる「ツタヤ図書館」が出来たそうです。

娯楽の少ない田舎にあって、スタバのコーヒーと共におしゃれな空間で本を楽しめる貴重な施設にはなるんでしょうが…

正直、このツタヤ図書館は高梁市にとってメリットではなく、むしろデメリットをもたらすのでは?と考えています。

 

その理由について、以下で説明していきます。

 

【もくじ】

投資額がでかすぎ!街が貧乏になる

まずはコレ。ツタヤ図書館が入る複合施設は、総事業費が約20億円

図書館の他に、スタバ、バスセンター、観光案内所、物産展やテナント店舗も入るみたいですが、20億円って相当な金額です。

岡山や倉敷のような都会でも怪しいのに、ましてや人口3万人の高梁市のような街で、20億円もの投資額をどう回収するんでしょうか。

 

その20億円ぶん、高梁市民が受けられるはずだった教育、福祉、就職などなどのサービスが、このツタヤ図書館に奪われてしまうんですよ。

 

毎年の赤字が街をより貧乏に

高梁市複合施設の収入源は、①テナント賃料・②物産展売上の2つと考えられます。

ですが、どちらも高収入はまず見込めないので、施設の維持管理費でも毎年赤字になるのではないでしょうか。

①について、そもそもスタバが高梁のような田舎に出店することはまず無いので、恐らく超激安な賃料(一坪5,000円以下とか…)を提示されたんでしょう。

②の物産展売上も、月売上500万円の10%歩合賃料と仮定しても50万円程度です。

せいぜい年1,000万円行くかどうかの収入だけでは、到底維持費すら賄えません。

 

この複合施設の中でも、公式サイトの写真を見る限り、ツタヤ図書館はかなり立派な造りです。

代官山のツタヤを広くした感じと言えば、都民の人は分かってもらえるでしょうか。

この図書館だけでもだいぶ維持費は掛かるはずです。

 

住民や近隣の人々は「おらが町にスタバができた!!」と喜んでいるかも知れませんが、税金で過剰投資が行われている現実を鑑みると、手放しで喜ぶべきではありません。

毎年赤字を垂れ流す大きな負債を市が抱えることで、あなたが受けられたかも知れない行政サービスが受けられなくなる可能性がありますからね。

 

潤うのは高梁市ではなく、大阪市だ

「なぜ大阪市?」と疑問に思うかも知れませんので説明します。

 

ツタヤ図書館の指定管理者(市の代わりに図書館を運営する団体)は、TSUTAYA運営母体のカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC社)です。

CCC社の登記上の本店は大阪市(本社は東京)。CCC社は毎年、発生した利益に応じて大阪市に法人税の支払いを行います。

そして高梁市からの指定管理者報酬・年間約1億6千万円は、当然ながらCCC社の売上になる。

つまり、CCC社が1億6千万円の売上を稼ぐ=大阪の企業が利益を上げる=大阪市に納税されて、市が儲かる、ということです。

 

もちろん、高梁市は毎年1億6千万円をCCC社に支払っているのだから、税金は出ていくだけです。

高梁市内の企業を指定管理者に指定すれば、そのお金は市内で循環しますが、CCC社は大阪なので、お金は高梁市に戻ってはきません

確かにCCC社にはTSUTAYA運営のノウハウがあり、ツタヤ図書館を運営できる唯一の企業ではありますが、その図書館を作るためだけに毎年2億円近い出費が出ていくという形になります。

複合施設開発と建物維持だけでも大赤字なのに、さらに指定管理者制度で多額の税金が飛んで行ってしまうのは、果たして良いと言えるでしょうか?

 

公共施設は税金で作られていることを忘れちゃいけない

スタバ図書館って、佐賀県武雄市が最初に導入して良くも悪くも話題になりましたが、僕にはそれを素人の自治体職員や議員が「面白そうじゃん」と簡単に解釈して、他の3自治体にも広がったイメージがあります。

いや、確かに面白そうなんだよ。実際に行ってみたいし、使ってみたいとも思う。

だけど、それが大量の税金で作られているとなれば、相応の価値を提供できるかどうか、きちんと考えなくちゃいけないだろとも思うのです。

 

箱物を整備するのって相当なお金がかかるし、ゆえに事業リスクって非常に大きい。

三井不動産とかプロのデベロッパーが、緻密な計画のもとに10年以上かけてようやく投資回収をするのが箱物ビジネスの業界なんですよ。

それを素人の公務員がやろうとしたら、新たに施設を開発して最終黒字を出すのってとてつもなく難しいわけ。

で、赤字=税金の損失って訳なんだから、そのぶん福祉も教育もサービスが衰えるし、道路も整備されないし、防災施設だって作れなくなるんです。

 

何度も言いますが、高梁市民の多額の税金はこのツタヤ図書館などの複合施設に費やされ、他に回らなくなったのです。

市民や観光客、ビジネス客がたま~~に使う綺麗なスタバや図書館が出来るのと、自分達の日々の暮らしが快適になるのと、果たしてどちらが良いでしょうか。

 

地域活性化=「住民がいつも幸せに、快適に暮らせる環境作り」のためには、「税金を損しないこと」が重要になってきます。

税金を損せず、適切に行政サービスに使うことで、住民が良い暮らしを送れるようになるのです。

箱物行政が失敗し、批判されてきたのは、ムダな施設開発ばかりに多額の税金が投じられ、結果としてその他の行政サービスが低下せざるを得なかったからです。

この認識はいち市民も行政職員も持っておくべきだと思います。

こうした考え方については、木下斉氏が非常に核心を付く考え方をしているので、著作を読んでみることをオススメします。

特に、地域活性化やまちづくり事業に携わる職員の方、民間の方は必読ですぜ。

    

 

まぁ、行政のお仕事に批判ばかりしては心に毒なので、住民の皆さんはツタヤ図書館をぜひ楽しんで頂けたらと思います。

あなたの街の市町村長の選挙の時に、行政に対する想いを票に込めれば良いので…

と、最近僕自身がそう思うようになったので、オススメの考え方として。笑

 

 

じゃあの。

 

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